RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

奇蹟のようなこと

他に表現が思いつかないほど、

多忙である。

そんな中、

生ゴミ処理機に南京錠が落下。という連絡を受けた。

異物混入により機械が壊れるのではないか。という

懸念である。

正直、南京錠の混入ぐらいでどうにかなるものでもないと思ったが

100まんえん以上する高額な機械である。

万が一、ツブした場合のことを考えるとゾッとした。

とりあえず本社のメンテ部門に連絡。

案の定「そっちでなんとかしろ」との返事だった。

僕の出動である。

機械の中は堆肥になりかけの生ゴミの山。

この中から南京錠一個を見つけ出さねばならない。

無理だろう?

ダメだった場合の言い訳を考えながら

スコップで掻き出していく。

これまでいろんな業務をやったがこれは

死体処理の次に困難な仕事である。

僕はこの作業に従事しながら、

いつの間にかこれはなんかちょっと宗教的な意味合いがあるというか、

例えば

泥の中から真珠が生まれるように、

炭素からダイヤが生まれるように、

トイレには神様が宿るのと同様に、

ゴミの中から黄金(真鍮)の南京錠を拾い上げる作業は

ちょっとした秘蹟なのではないかと考え始めた。

ところで僕は個人的に、

南京錠の意匠が好きである。

有名なシドビシャスというパンクロッカーの人も、

南京錠のネックレスを好んで着用していた。

錠前のもつ無機質さ、排他性。

彼岸との結節点。

繋ぐものであり分かつものでもあるという両義性。

そしてその堅牢な意匠にストイックな官能性を見出すのである。

素敵。

そんな南京錠を愛する僕が

それをゴミの山から探し当てる任を充てられたのは

偶然ではないのかもしれない。

果たして神は舞い降りた。

自棄になってムチャクチャに手を突っ込んで探したら、

その手にそれは触れたのである。

真鍮の、鈍い輝きを放つそれは

まさしくゴミの山が生んだ秘蹟であろう。

今日も辛いが頑張る。

僕が掴んだ南京錠は

何か大事なものを繋ぎ留めているのである。