RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

債権総論

「Rさん、おはようございます。・・・あれ? 今日はくまじゃないんですか」 いつも明るい丸の内さんだった。 「チワッス丸さん。僕がくまから浮気する訳ないだろ。  じゃじゃーん」 と、僕は陳腐な擬音もつけて徐に背中を向けてみせた。 「なんと!このティーシャーツはバックプリントで  くまが描かれているのさ」 と、くまがサタデーナイトフィーバーのポーズをしている絵柄を 指で示した。 僕はいつものように丸さんが、 「すごおい。Rさんオシャレですねー」と 返事してくれるのを無意識に期待したが 返事は思いもがけず、 「うーん」 という微妙なもので、 「あ。あんまりだったかしら」と 僕は背中を向けて首だけ後ろに回したポーズのままで問うてみた。 丸さんは、 「えっと、ほら、バックプリントっていうと、どっちかっていうと、  ヤンキーの人っていうか、や。ちょっと派手な人が好んで着てて、  ほらやくざの人の入れ墨とか、そこまでいかなくてもスカジャンとか、  そういうのが背景にあるから、どうかなあっと思って」 ・・・と、屈託のない笑顔で言った。 「はは、君の指摘はもっともだね」 曇った僕の表情を察してか、丸さんは慌てて話題を変えるように、 「あ。えっと。ところでRさん、社内研修の課題の、 民法の制限種類債権のことでちょっと教えてほしいんですけど、 いいですか?」 「えっ民法?いやあまいったな。僕なんかよりも法務部の人に 聞いた方が早いし正確だよ」 ・・・突如振り向けられた質問に一瞬困惑したが、 ちょうどいま法律の勉強中である僕を指名してくるとは鋭い。 いい気になって続けた。 「ぅでも、せっかくだし、分かる範囲でよければ答えるよ。    っていうか、なんで僕に?」 「爽川さんが言ってましたもん。『Rはマニアだ』って」 ・・・丸の内さんのあどけないその一言に僕は再び傷ついた。 どうせ人を評価するなら「博識」とか「碩学」といった言葉を使ってくれたら 僕も気分良くティーチングできたのだが、よりによって「マニア」はなく、 これでは蔑称である。 まるで暗く狭い部屋で独り黙々と実生活に役立たない趣味的なことに 没頭している人のようだ。 そこまでイメージして、それが自分と重なることに気づいたがすぐ打ち消し、 「・・・ああ、僕は民法のプロだからね」 と、さりげなく言い換えて債権総論についてレクチュアした。 僕はマニアでなく尊敬される何かになりたい。
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