「『お前』っていうたらあかんのやでー」と
どうやら豚児は保育園で教わったようだ、
礼儀を弁えた人称について述べている。
確かに「御前」とは熟語の印象とは裏腹に、
相手を見下した二人称代名詞である。
ちゃんと保育園でも躾けて貰っていて
有難いことだ。
では、失礼でない二人称代名詞とは何か、というと
当然「貴方(あなた)」だろうが、
意外に使いにくい。
「あなたを愛してる」等、同格の相手にはまあ妥当だろうが、
なんか気障な感じもしなくもない。
「あなたのレポートは良く書けていますね」等、目下の相手には
これで良い、といったところだろうか。
しかし、社長とか学校の先生のような目上の相手に対して
「あなた」と呼んだりするのはちょっと抵抗がある。
代わりに何と呼べばいいか考えたが、
僕の語彙の中には見当たらなかった。
困った。
貴方とかお前とか貴様とか君とかいろんな二人称代名詞を持ち合わせながら、
どれ一つとして同格から目上の相手に対する代名詞たりえない日本語は、
実は大きな欠陥を隠しているのではあるまいか?
英語なんて、相手が部下でも大統領でも「you」を使う(と中学の時教わった)のに。
どうしようか悩んでいたら、ある一人の人物が
この日本語の欠陥を克服していることに気づいた。
ジャニーズの社長である。
「ユーは来年CDデビューするよ」等と、
なんとこの人は英語の「ユー(you)」をそのまま日本語の会話に用いることで、
人称に伴う問題を回避しているのである。
見事だ。これなら英語同様、オールラウンドで二人称代名詞を使える。
これで今日の商談もバッチリだ。