僕の知っているZくんという男は
いわゆるマイペース、というか
思い込みの激しい人間で、そのせいで
僕とか周囲の人間とコミュニケーションを齟齬を来すことがある。
大概独善的な僕ですらそういう印象を抱くのだから
Zくんはなかなかの逸材だと言わざるを得ない。
例を挙げると
僕やその他の人間が
「あれ、赤だよ」とか指摘しても
「いいや。青だし」と平然と通行する。みたいな、
聞く耳を持たないフシがあるのだけれども、
10年を経て最近ようやく彼の凄さが分かるようになった。
彼は、
「オレ、○○大に入るし」と言ったら
ちゃあんと難関の○○大に入学、卒業した。
「テニスの大会で優勝するし」と言っていたが
忘れたが何かローカルな大会で優勝したと聞いた。
「製薬(会社)に勤めるし」と言っていたが
ちゃあんと某大手製薬会社に入社している。
「東京に行くし」と言っていたのも
就職と同時に叶った。
「20代前半で結婚するし」というのも
まあ当たっている。
「3人子供がほしいし」という願望も
その通りになったようだ。
いまは
「湾岸にマンションを買うし」と
息巻いているようだが、これも難なくやり遂げるだろう。
まあ、一つひとつのことはメチャクチャ驚くほどのことでもないが、
彼が偉いのはそれら全てを
実現可能性のほとんど見えない何年も前から予告、
何年も後にしれっと結果を出していることである。
彼は自分の人生が「思い通りになる」と思い込んでいて、
そんな訳ないだろ。という周囲のやや冷めた目を意に介さず、
平然と不確実な予告を口にしては確実に実行に移す。
今になって僕はそれが偶然ではなく、
やっぱり運命というのはある程度自分でコントロールするもんなんかな。とも
少し思うのである。
恐らく彼は僕がしているような、脂汗を垂らしながらの「努力」ではなく、
やって当然して当然。とも言わんばかりの態度で
勉強でも仕事でもなんでもやっているのだろう。
実際学生時代もそうだったし、
今もそうに違いない。
少し彼を真似てみたいと思った。