RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

廃墟

冒険である。

僕は「廃墟」が好きで、写真集を見ながらうっとりしているんだけれども

そんな僕に僕がやるためとしか思えない仕事のオファーが舞い込んだ。

「廃校探検」である。

少子化の影響もあって全国では毎年100や200もの学校が

閉鎖されていると聞くが、

大阪も例外でなくここ10年の間にも

僕の住む近所でいくつかの学校が消滅している。

廃墟のなかでも、廃校というのは

他にないノスタルジアが溢れていて好きだ。

一度、廃校に出かけて写真を撮ったりしたいと思っていたのだけれども

昨日。

近年閉鎖された学校を他の用途に転用するため、

中にあったもう要らない備品なんかを民間に格安で払い下げる。という

試みが行われた。

払い下げる。といっても、まだ学校に残っている品物を

直接取りに行き、その場で入札交渉をするのである。

僕は使い古された備品とかどうでも良く、

ただ廃校探検をしたかったので課長に

「この入札、応募してもいいですか」

「いいよ」

と単身山奥の廃校に原付を飛ばしたのだ。

果たして廃校はその役目を終え、

校舎だけがやけに生白く太陽の光を跳ね返していた。

草生した校庭。

中に入ると廊下はうっすら暗く、

僕ら応札した連中ががやがやしている以外は静謐、

営みを止めた建造物の空虚がそこかしこに潜んでいる。

中はもう既にかなりの備品の搬出が終わっているようで、

職員室なんかも恣に「荒らされた」感があったが

この荒廃感がまた良い。

薬品が散乱した理科室なんかも良い。

一眼レフを持って出かけようと思ったら

「観光じゃないんだ。バカ」と課長に咎められ

泣く泣く置いてきたのだが、

携帯のカメラではこの雰囲気は伝わらない。

せっかく来たのだから何か記念になるものを。

と、校門にあった表札をドリルで引っぺがして入札しようとしたら

「それはやめてください」と言われた。

・・・と二時間ぐらい校舎を探検して、

僕はひたすら廃校の空気のなか

うっすら感動を覚えるほどの恍惚感に浸ったのだが、

おそらくここが訳の分からない、安っぽい

「○○センター」とかに生まれ変わるのが

僕は残念で仕方がない。

廃墟を廃墟のままで残しておくことは不可能かもしれないが、

軍艦島のように廃校は廃校として静かに生き存えさせるのは

無理かなあ。と考えたりした。