前回のエントリで
「１０００分の１の幸福を射止めたならば、
１０００分の１の不幸も甘受しなければならない」
という命題について論じたが、
今回はその反証、
「１０００分の９９９は幸せ」という
テーゼについて検証したい。
先にも少し触れたが、
多数派であることは内容はともかく、
とりあえずは幸福。であることをまず押さえておきたい。
日本に住んでいる人は大多数が日本人なので、
街には日本語を喋るひとが最も多く、
日本語表記がない店はない。
だから日本人の僕も国内であればそう会話に不自由しない。
生きやすい。
フィリピンからの留学生Fさんは、
まだ日本語が片言であり、
タガログ語の表記が地下鉄にはないので
梅田から
天王寺に行くのも随分と苦労する。
生きにくい。
当然である。
社会はその構成員の多数派がもっとも快適になるように設計されている
からである。
残念なことではあるが、男子・女子用トイレの数に比べ、
多目的トイレの数は何十分の１にも満たない。
僕は豚児の用便やおむつ替えに便利なのでよく利用していたが、
なかなか見つからないし、また空いていない。
僕みたいな立場の人間はたぶんかなり少数派であるが、
これがあと３０００万人くらいいたら、
状況はまるで違ったものになっていたと思う。
「オレは庶民とは違う
スペシャルな才能で生きるぜ」と
いうロックなA君がいたとして、
この人は
スペシャルな才能を生かして歌うたいとして
生きているのだけれども、
A君の
スペシャルな才能で紡がれた歌は
同様に
スペシャルな人にしか理解されず、
その
スペシャルなリスナーは
スペシャルな彼同様に
１０００人に１人くらいしか生まれないのであって
極めて狭いマーケットの中で細々とCDを販売しているのであった。
売上がそうなので生活も貧困、
国民年金保険料を払うのに必死の有様であった。
また、彼は中学生の頃から
スペシャルな歌ばかり聴いて育ったため
凡庸な歌を聴く大勢の友人からも孤立し、孤独に生きてきたのであった。
それでもA君自身は幸せだろうし、そこに僕みたいな他人が
容喙するいわれはない。
一方、彼のクラスメートであるBくんは、
大衆向けの歌を聴いて育った大勢に属する。
カラオケでは友人たちとアイドルの歌を愛唱し楽しんだ方である。
地元の公立中から公立高に進学、
大学は倍率４倍程度の学校を４校受験し、
合格した１校に入学、卒業したそして。
社会人になったいま。
紹介してもらった工場に勤めるかたわら、
家庭では時々ダメな点もあるがよき夫として家族の面倒を見、
たまにミスもするがよき父として子を養育している。
勤め人なので
社会保険料は会社が半額負担の
源泉徴収である。
周りを見渡せば、大雑把に見てA君よりもB君に近い人が
１０００人のうち９９８人くらいいた。
B君はたぶん幸せだろうし、関係のない僕も彼を幸せだと思う。
そんなの人生観の問題。とシニカルに片付ければいいのだけれども、
少数派の生き方を選択するにはそれだけのリスクを負わねばならない、
ということは肝に銘じておくべきだろう。
たまに、自分は少数派だったけど才能と強引さで自分の方を
多数派にしてしまった。という強者もいるが。
（それは少数派のなかでも少数派である）
宝くじにも交通事故にも当たらない人が
当たる人の何倍も多数派だけれど、
僕自身はその多数派の方に入れたらいいなと思う。
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