平野啓一郎さんの新著『かたちだけの愛』が
昨日発売された。
これは読売新聞の新聞連載の単行本化。
『かたちだけの愛』、僕は自宅に新聞をとっていないので
連載時には読むことが出来ず、単行本化を首を長くして
待っていたんだけれども漸く今日手に入れた。
そして、驚くべき真実が判明したのである!
平野さんは連載開始前に、ブログで
「あなたの町が小説の舞台に!?」という題で
以下のような募集をされた。
まだ、思案中ですが、今回は、できるだけシンプルな設定で、
恋愛について書いてみたいなと漠然と考えています。
それで、建築家のように、自分と縁もゆかりもない土地をポンと与えられて、
そこから立ち上がってくるものの力で、小説が書けないものかと
ちょっと考えていまして、我が町こそは!という場所がありましたら、
どうぞ、ご紹介ください。
(http://d.hatena.ne.jp/keiichirohirano/20090413/1239558397
より引用)
…ということで、大ファンの僕も
平野さんは「海が好きなので、海辺ならなお良し」というのも
書かれていたけれども、僕は海をあまり知らないし
琵琶湖も海みたいなもんだよね。
と思って送信したのである。
無論、僕なんかのチンケな推薦が採用されるとは夢にも思わないし、
そもそも僕みたいな零細一読者のメールをご本人が
多忙な中、目を通されているとも考えにくいし
期待、というものをするまでもなかったんだけれども。
まさか。である。
滋賀県民よ、刮目せよ!
17章「帰郷」~19章「告白」に至るまで
実に50ページ近くの作品の舞台が
しかも、ちょいと立ち寄った。という扱いではなく、
主人公の実家という、
非常に重要な設定がなされているのであった!!
僕は平野さんに宛てたメールの中で、
「長浜タワー」みたいな地元民も知らないような
超マイナースポットのことも書いていたのだけれども、
なんとその長浜タワーもバッチリ登場する。
主人公が通りすがりにここで写真を撮るのである。
その他、豊公園で遊んだエピソードとか、
いままで遠い世界だった小説というものが、
まるで知り合いの生い立ちを聞いているような
奇妙な親近感をもって立ち現れてくるのである。
重ね重ね驚きだ。
日本を代表する芥川賞作家が
日本を代表しない一貧乏人の住んだ街を描いてくれた。
僕は嬉しくてしょうがない。
この本は家宝にして末代まで伝える。