RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

命名考(4)

鼻山村の運動会とか、

近所の小学校の運動会とか、

そういうシーズンでもあるので散歩がてらに

ここ数日ぶらぶら観に行った。

明後日に自身の運動会を控えた

豚児の予習のためでもある。

どれどれ。これからどんな競技が始まるのかな。

プログラムを観ると、楽しそうな名前が並んでいる。

運動会、いいね!

これから始まるのは

「大空に舞う」という種目である。

雄大なタイトルだ。一体何が舞うのだろう?

わくわくして観ていたら

アレ。

玉入れだった。

次は、

「一瞬の風になれ」という種目である。

タイトルからして感動的だ。

一体どんなエモーショナルな競技なんだろう。と

わくわくしていたら

アレ?

普通の徒競走だった。

豚児がぐずぐず言い出したのでそろそろ帰ろう。と

思ってでも次の

「超重力ブラックホール

これは今日のクライマックスに違いない。

豚児を説得して無理矢理観客席に座らせた。

光すら飲み込む漆黒の闇が顕現するのである。

期待に胸を膨らませているうちにも号砲がなった。

ぱあん。

アレレ?

よくある、

「台風の目リレー」だった。

……というように、プログラム名に惹かれて僕は

通常の運動会種目を予定以上に観てしまい

これは主催者の意図するところだったのかもしれないけれども、

正直なところ名前と眼前の競技との落差にアレ。を連発せねば

ならなかったのである。

キッズたちを貶めるわけではない。

彼らは一生懸命頑張っていたけれども

残念ながら一瞬の風と呼ぶにはあまりにも詩情に欠けた。

キッズ達が頑張って走っている姿はそれだけで美しいのではあるまいか

が、それを演出すべく命名した競技名は大仰に過ぎたため、

却って目の前の競技との落差を際立たせる結果になった気もする。

過日、僕は

「名前と実力は比例する」というテーゼの証明に成功したが、

それは人間とかの有機体というか、可塑性があったり

ポテンシャルがあったり

要は不確定要素の多いものに対する命名の仕方であって、

例えば

「プラスドライバー」とか

「蛇口」

みたいな、

それ自体の評価が確定してしまっているものに対しては

ヘタに立派な名前をつけると混乱を招くだけである。

「力学的安定回転軸ねじ回し」とか

「自在調節命の水」なんていう名前だったら訳が分からない。

命名のもっとも根本の目的は、

「事実を正しく伝える」

ことにあるのであり、

これに則ればやはり

「一瞬の風」は

「50m徒競走」に、

ブラックホール」は

「台風の目リレー」で

いくべきだったのである。

オリンピックで、

「ボルト選手、『一瞬の風』金メダルに輝きました!」なんて

実況は聞いたことはない。

そんなことを言いつつ僕も、昔

頼まれてプログラム名を考えたことがあって

「『玉入れ』でいいじゃん」

「『玉入れ』じゃ味気ないよ。なんか別の」

「じゃあ、『赤血球&白血球』でどお」

「それいいね。免疫システムていう発想は運動会らしいね」

と、そのまま採用されたことがあったのだが

今になって猛烈に反省している。

赤血球が飛び交うならそれは惨劇であるし

何より大袈裟である。

「活火山&細雪」の方が良かったかも知れない。