RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

表敬訪問

ウチの会社は市とも取引をしているので

時々市役所に遣いに行くことがあるんだけれども、

今日は参った。

いつもは環境課とか割と辺境の部署に用があり、

「マジだるいよねー」なんて受付の人とほざきながら

30分ぐらい居座ったりするんだけれども、

今日のお遣いは違った。

「Rくん、これを役所に持ってってくれんかね」と

渡された文書の宛先は環境課でも公園課でもなく、

市議会議員3名、

市議会正副議長、

市長

だった。

中身はしょうもない礼状か何かだろうけど、

持って行くのはカジュアルフレンチな環境課や

公園課といった気の置けない部署ではなく、

市役所本館の部外者にはちょっと入りづらいところである。

「オレ行ったことないですよ」

「怪しまれないようにしろ」

本館は絨毯ばりで中も静かだしちょっと緊張するね。

市長室はどこだろう。

「口で探すな目で探せ」というのを何かで聞いて以来

なるほどと思って実行しているのだけれども、

なんでもすぐそのへんの人に頼るのはよくないね。

でも、人を頼らないとすると必然的に

自力できょろきょろ探し回らなければならないわけで、

すなわち挙動不審になるわけである。

「何か。」と僕を呼び止めた若い女性職員のその目は、

アナーキー」と大書されている僕のTシャツを不審そうに眺めていた。

「え。いっやー。あっのー。僕は無政府主義じゃなくって、

 どちらかというと北欧的な福祉国家が好きですね。

 あのこれは、政府の転覆を意図してるんではなくて、

 機能しない行政府に対するちょっとしたアンチテーゼみたいなもの、

 あいやいやいやお気を悪くしないでくださいね。

 皆さんのように真面目に働いている職員の方が殆どなのは

 僕もよく存じ上げております。ですが、政策の齟齬というか、

 どうしても現場との認識がずれてお」

「ところでご用件は」

僕のお気に入り、

シドビシャスという人がつけていたネックレスを珍しそうに眺めている。

「ええ、ですからなんでも民間に丸投げ、というのは

 よくないと思うんです。僕ら鼻山支店は市役所の方々と

 一緒に市の発展に貢献したいです。

 なので、議員さんと議長様と市長閣下にこれ、

 お持ちしました」

「市議会事務局はあっち。市長はいそがしいので

 文書は秘書課に持ってってね」

「ありがとうございました」

僕は敬礼をして踵を返した。

すれ違い様、

「私はニルヴァーナだけど」

と聞こえたような気がした。

お陰で無事に市議会の人と秘書課の人に

文書を渡すことが出来た。今日もよい仕事をした。