RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

いすとりゲーム

長雨のためプールに入れないらしく、

豚児は保育園でいすとりゲームに興じているそう。

「まさか最後まで残らなかったよな?」

最後の方で敗北したというのを聞いて安心した。

日頃より

「公共の場では席を譲りなさい」と

謙譲の美徳を説いている父(僕)としては、

限られた椅子に我先に群がるような行為は称揚できないのであり、

椅子が足りない場合は率先して譲れ。と諭さねばならないのである。

しかしそれではいすとりゲームが出来なくなって園児たちが退屈してしまうので、

代替のゲームを考えた。

「譲り合いゲーム」

である。

以下、モデルケースを例に説明する。

「おや、畠山さんではありませんか」

「これはこれは松平さん。奇遇ですな」

「いやはや、驚いた。随分ご無沙汰しておりますなあ」

「ええもう、最近は滅多にこの界隈を訪れることもなく」

「懐かしいですなあ、どら、昔話なんぞしたいもんですわ」

「ええもう、ほら、立ち話もなんですから、ほら、ここの椅子に」

「いやはや、畠山さんがお掛けください」

「何を仰るか、松平さんこそどうぞ」

「いやはや、畠山さんを差し置いて私なんぞが」

「何を仰るか、私如きがふんぞり返るわけにもいかんでしょう」

「いやはや、私も実のところを申せば、運動不足を医者に言われて

 おりましてなあ。」

「そうでしたか、私も最近メタボ検診とやらでひっかかりましてなあ、

 お互いトシは隠せんものですな」

「全く。しかし一つ若輩者の私が畠山さんを差し置いて」

「何を仰るか、私はまだまだ楽隠居、という身分ではのうてね」

「いやはや、矍鑠としていらっしゃる、やはり私の方こそ起立して鍛えねば

なりませんなあ」

「何を仰るか、いまや松平さんは一国の主。社長こそこの椅子が相応しいと

いうもんですな」

(中略)

「ほら、やっぱり畠山さん、トシは隠せんもんですわ。

 先程から汗が止まらないご様子で」

「うぬう、バレておりましたか、やはり、3歳を過ぎると

 身体が重うてね」

「そうでしょう、私なんぞはまだ2歳ですから、

 立てるようになってまだ間もないもので」

「やはり、老後を健やかに生きるには運動が欠かせませんな」

「しかし、年寄りの冷や水とあっては本末転倒、ささ、こちらの椅子へ」

「うぬう、ではお言葉に甘えて腰掛けるとしますか」

「…私の勝ちですな」

以上が概略だが、詰まるところ

先に椅子に座った方が負け、という単純明快なゲームであり

保育園児もすぐにルールを理解できるだろう。

上記のように、このゲームはいすとりゲームのように

おしりをねじ込んだり姑息な手で椅子を奪ったりするのではなく、

起立姿勢を維持する持久戦と、

相手を椅子に誘導する高度な心理戦が合わさった、

なかなかに奥の深いゲームなのである。

これを全国の幼稚園保育園に取り入れることにより、

謙譲の美徳を保育で養ってはいかがだろうか。