RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

最強の超人

BS日テレで平日夕方6時から

アンパンマン」の放映があって、

夕食の支度のあいだ豚児が観ているのだけれども

今日たまたま目にしたキャラクターが凄い奴だった。

名前が分からなかったのが残念だったけれど、

外見は電子レンジみたいな奴で割と地味。

しかしその能力たるや凄まじく、

顧客の要望に応えてあらゆる山海の珍味を数秒で拵えるというもの。

意匠を凝らしたウェディングケーキみたいな立派な菓子も

同様に数秒で差し出していました。

通常、この物語はアンパンマンならあんぱん、

てんどんマンなら天丼、というように

そのキャラクターのモチーフとなっている

一品のみ提供するきまりになっていたはずですが、

彼はドラえもんの「もしもボックス」的に世界観を覆すおそれのある

危険な超人です。

仮に「万能マン」と呼びましょう。

あらゆる料理を提供するからといって、その一つひとつの質は

決して三流ではなく、アンパンマンのあんぱんにも匹敵する

あんぱんを作っていましたから実力は相当のもの。

バイキンマンとの百年戦争

彼の登場でついに幕引きか。と思われたのですが…

……しかし、万能マンはバイキン達との戦闘で敗地にまみれ、

ライバルのアンパンマンに窮地を救われるという

信じられない結末だったのでした。

示唆に富む物語を紡ぐやなせたかしさんは、

この顛末を通じて何かを訴えたかったと思いますが、

僕は、「器用貧乏」の悲哀をここにみました。

その言葉が指し示すとおり、日本では

「なんでもできる人」というのはあまり評価されません。

むしろ、少しぐらい欠点があった方が人間味があってよい。

ぐらいに言われるし、

計算尽くの完璧な走りをするシューマッハより

どこか無謀なセナの方が人気があるようなものです。

僕が好きな野球選手の一人が、大阪近鉄バファローズにいた

五十嵐章人選手です。

いわゆる「ユーティリティプレーヤー」でどこのポジションでも守れる

頼もしい人でしたが、実力は決して中途半端ではなくこの人はなんと

日本プロ野球メジャーリーグを含めて

 全ポジション出場と全打順本塁打の両方を達成した唯一の選手

ウィキペディアより)

なのです。

こんな輝かしい記録をもつ、野球史上最高に万能で器用な五十嵐選手ですが

あまり知る人はいません。

それよかは、「代打の○○」とか「盗塁の○○」みたいな

わずか一芸で名を残す人の方がよっぽど多いのです。

恐らく、この「万能マン」も地味なルックスでもあるし

アンパンマンの歴史からは消える運命であることは容易に想像がつきますが、

僕は彼らを決して過小評価してほしくないなあと思ったのでした。

万能マンに一つ教えてあげたいのは、

人間には「ハロー効果」という認知バイアスがあって

相手に何か一点、秀でたものがあるとそれ以外のものもなんとなくよく見えてしまう。

みたいな錯覚を覚えるものです。

アンパンマンはこれを逆手にとって、パンチだけをやたら強化することで

「なんか全体的に強そう」みたいな印象操作をしています。

万能マンもこの仕組みに気づくならば、アンパンマンを超える日も

そう遠くはないと思うのです。