RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

しまじろうコンサート

豚児もついにライブデビューを果たした。

アーティストは「しまじろう」。

幼児の間で絶大な人気を誇るスーパータレントです。

とはいうものの、僕がその人気を実感したのは会場に入ってから。

あの大きな厚生年金会館大ホールを埋め尽くす幼児(と保護者)。

そして、開演。

主人公たるしまじろうが登場すると会場を揺るがすしまじろうコールが。

あいつ…いつも半笑いの分際で、これほどまでに人気があったとは。

ライブ中も軽快なダンスと歌で観客を魅了し、

MCのおねえさんやその他客席にもスタンバイしたおねえさんたちが

オーディエンスを煽り、盛り上がりは最高潮に。

凄いじゃないか。しまじろう。

今回のライブは、しまじろうを主人公とするミュージカルでした。

キリスト降誕を題材とした宗教劇のようなものですが、筋書きは以下のようなもので、

クリスマスに世界中の恵まれない子どもたちに贈るプレゼントを作るため、

ユニセフか何かの融資を受けた財団の下、しまじろう一門が労働に従事する序盤。

ミレー的な観点で描かれたそれは、手工業に精を出す毎日に小市民的な幸せを

見出すしまじろうたちとともに、和やかに場面が進んでいきます。

このへんもキリスト教的な価値観が色濃く出ています。

クリスマス、サンタクロースの出発に華を添えるため、

音楽祭が催されることになりここからしまじろうたちの試練が始まります。

当初音楽祭の主役として目されていた熊みたいなやつが、

急遽不調を訴え降板。

華々しい彼の退場とともに、それまで地道におもちゃ手工業に従事していた

しまじろうに俄にスポットが当たるようになります。

他でもない彼が選ばれたのはやはり選民思想が背景にあるからで、

「誰でも良かった」訳ではなく、「神に愛された」つまり恩寵を受けた者でなければ

ならなかった、それがしまじろうだったのです。

しかしながら、鍵盤に初めて触れるしまじろうに

華々しい旋律が奏でられるわけではなく、

彼我の差に苦悩するしまじろう。

葛藤と努力、そして奇蹟…

キーパーソンとなる、おねえさんとの出会いが彼を変えます。

おねえさんとの連弾がしまじろうの弾く単調な旋律を

きらめく音の粒として紡ぎ、一体となり昇華していく様。

ここに霊肉一致の暗示をみたのは僕だけでしょうか。

おねえさんはまさしく聖母マリアの隠喩であり、

また、初めて出会う「異性」の暗示に他ならず、

またその出会いがしまじろうに幼児期の終わりを告げ、

青年期への成長を媒介するものであったことが読み取れます。

苦悩するしまじろうに「力を!」と、まるでニーチェ的な

力への意志を背景に、おねえさんは観客を盛んに煽ります。

そこから急き立てられるように舞台は終幕へと向かい、

最後はオペラ座の怪人「マスカレード」の場面のように

大合唱のもとに幕を閉じます。

最後、サンタさんが空へ飛び立っていく様は

キリストの降誕と裏表になっていかにも荘厳で、

浄土真宗教徒の僕も思わず呆然と見惚れてしまいました。

しまじろうは本当に凄い奴です。