RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

正論君という男

ひさしぶりに正論君に会いたくなった。

正論君というのは僕の学生時代の友人。

正論君というのは僕が心の中で勝手に呼んでいる仇名で、

なんで正論君と称したかというと、

彼の発する言葉一つひとつがどれも憎らしいほど合理的で、

非常にロジカルシンキングに長けた男だからです。

そう書くとあまり仲がよろしくなさそうですが、

実際大して仲良しなわけでもなく、

僕とは何度も口角泡を飛ばす議論を交わし

いつも僕が敗地に塗れていたような間柄ですが、

僕の方がちょっと大人になったのか、

近年は正論君に正論でずば。と斬られることがむしろ快感に

感じられたりしてきました。

あの頃はまだ若く、僕も自分のプライドというか、

思春期特有の万能感というか、

分相応を弁えていなかったフシもあったのですが、

いまでは自分の力量の程もメタ的に自覚するようになり、

それとともに、奴には敵わない。と悟るに至って

彼の鋭利な正論も受け入れられるようになりました。

こう書くと、なんか偏狭な、屁理屈ばっかこねる

頑迷な輩がイメージされますが、

実際の彼は見た目も涼やかだし、

相手によって適切な話題を選び、

人間関係に相応のバランス感覚を備えていて

周囲に人気もあります。

僕はなんか困ったことがあると、

こんな時正論君ならどんな答えを導くのだろう。と、

「もお少し噛み砕いて話すとね」と、彼の口癖と思考回路を真似して

考えてみたりもするのですが、

実際に正論君に僕の主張をぶつけてみて、

「それは確かにR君のが妥当だろう。猿川の言う『ブランコ理論』なんて

 

 一昔前の構造主義劣化コピーさ。まだポストモダンを引き摺ってるのか」

…等と正論君の同意が得られたときは僕も随分自信を得るものです。

もっとも、そんなのはまれで、正論君に相談したら逆に

説教される場合がほとんどですが。

僕はそんな彼を疎ましく思いつつでも尊敬するのは、

彼の正論が口先だけでなく、実際の行動も伴ってのものだからです。

以前、飲みに行った際に、

「君は営業マンなんだから売り上げを伸ばすことが第一の役目だろ。

 売れない言い訳を考える前に売れる方法を考えろ」と

まさしく教科書通りの正論で説教されたのですが、

僕は内心(面と向かって反論できないから)

『自分はバイヤーで買う側のくせに。売る方の気持ちなんか分かるかよ』

と文句を垂れたのでした。

でも、次に居酒屋で会ったとき。

僕は正論君に、

「なあ、この前言ってた、原材料の採取禁止で入手不可能っていう

『生化学XXX』結局無理だっただろ」と、

まるで本気にしていなかった話を取り上げて聞いてみました。

彼は、

「ああ、○○さんと、△△のツテを頼って、なんとか

10単位手に入ったよ。□□に依頼するときには5,6回足を運んだけどね。

さすがに骨が折れたよ」

と、そのスジでは有名な人と政府機関を挙げ、僕に語ってくれたのでした。

僕はそんな彼に一生勝てそうにありません。