RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

友人の上司#4

「金魚にエサをやっといて」

「わかりました。どこの水槽ですか?」

「そんなもん自分で探せ。猿野郎」

……と、無理難題を押しつけられたNくんはいつものようにガストで憤慨していました。

「どの金魚が腹減ってるかなんて俺に分かる訳ないだろ」

とかく頑迷固陋な人はいるもので、Nくんとこの係長もその代表例なんだけれども、

先月のこと。

彼の課が発行している「総務課だより」をNくんが担当することになり、早速下書きを仕上げた彼は

係長に伺いを立てました。

で、いつものように「検閲」が始まったわけですが、その偏向ぶりは以前も当ブログで記した通りです。

係長は一通り文体とか句読点の位置について持論を展開した後(鴎外とかの擬古文体を好むそうです)、

今回はさらに予想外のオマケをつけてきました。

「Nくん、このバナナのイラストはなんだい?」

「えっ?あのう、ここに余白があったからカットを入れるのに丁度いいと思って、で何がいいか。と考えたん

ですけれども、総務課とかなんか地味だし、やっぱ気分が明るくなるものがいいな、と思ってじゃあ甘い物か

果物だ。と思って最初イチゴにしたんです。でも白黒でコピー取ったら真っ黒いブツブツの物体になって

気持ち悪くって、バナナに替えたんです。バナナってほら、輪郭を見ただけで黄色を連想するっていうか、

これほど形状と色彩が密接に連関してる果物ってないですよ。リンゴだって青リンゴもありますからね。

バナナダイエットっていまどうなったんだろう。アハハ」

ガストで僕はNくんなりの根拠を聞いてそれなりに納得しました。

「いいんじゃないの」

でも係長は、

「N君、バナナなんて年中売っているものなんて何の季節感もないじゃないか。

 いまは12月、もっと冬らしいものを考えろ」

「ええっと、じゃあミカン…」

「たわけ。冬でも12月といえば冬至冬至といえば南瓜。という発想になぜ至らんのだ」

……と、半ば強引にバナナのイラストを係長の推すカボチャに変更させられたNくん。

後日、「ハロウィンってだいぶ前だったよねー」なんて社内の冷めた声を背中に聞きながら、

ますます係長への憎悪を募らせるNくんでした。

どうせなら顔が描いてあるカボチャがカワイイと思って差し替えたのは

余計残念な結果をもたらしたようです。

実はこのNくんの銀行とウチの社は文房具とかの取引をしていて、ウチが時々Nくんとこに納品したりする仲

なんですが、こないだ新年ということもあり、通常の取引連絡に加え年賀状を兼ねた挨拶メールを

HTMLメールで送りました。

3時間後に返信が返ってきて、さすが地銀。がんばってるな。と開いたら、

 メール拝見しました。

(本文略)

追伸:「謹賀新年」等のあいさつは省き、内容を明瞭簡潔にお願いしたく存じます。

                      ○○銀行 総務課:(係長)

                                

とあって、口があんぐり開いたまま閉じなかったんだけれども、なぜかというと、

一つはNくんから散々時候のしきたりについてのこだわりを聞かされていたのに

その真反対の返事が返ってきたことと、

もう一つはメールの余白につけた、牛がはねつきに負けて墨塗れになっているイラストには

触れていないことで、「こっちはええんかい」とツッこんでしまったことでした。

僕はこれを読んで、Nくんへの同情を一層深めたのは言うまでもありません。