RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

藤沢周『心中抄』

藤沢周『心中抄』を読みました。

雑誌『文藝』に数年間にわたり連載された作品なんですが、

昨年ようやく単行本になりました。

筆者の幼少期の自伝めいた語り口になっていますが、

作家である現在の自分との対比のなかから、

小説を「書く」意味を求め、彷徨う……という展開です。

この人の作品を読む度、新潟の内野という街で育つべくして

育ったんだなあ……と思います。

内省的なモノローグが作品の大半を占めるのですが、

作者の原風景の描き方の美しいこと。

作中何度も登場する、

「幼い自分にとって世界は、(中略)…だった」という述懐、

それに出会う度に自分も「ああそうだったかなあ」と共感してしまいました。