藤沢周『心中抄』を読みました。
雑誌『文藝』に数年間にわたり連載された作品なんですが、
昨年ようやく単行本になりました。
筆者の幼少期の自伝めいた語り口になっていますが、
作家である現在の自分との対比のなかから、
小説を「書く」意味を求め、彷徨う……という展開です。
この人の作品を読む度、新潟の内野という街で育つべくして
育ったんだなあ……と思います。
内省的なモノローグが作品の大半を占めるのですが、
作者の原風景の描き方の美しいこと。
作中何度も登場する、
「幼い自分にとって世界は、(中略)…だった」という述懐、
それに出会う度に自分も「ああそうだったかなあ」と共感してしまいました。