私の敬愛する不肖・宮嶋氏が、南極探検で有名な白瀬中尉について語る、
ということで買い求めました「NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」
筆者の宮嶋氏は、戦場カメラマンで有名な方ですが、
文才にも非常に長けた方です。写真の一行のキャプションから、数々の著書まで
風刺の効いた文体で読ませてくれます(ライターの方が構成された本も多いですが、
おもしろいです)。で、今回の人物伝も一気に読んでしまいました。
白瀬中尉(名前の「のぶ」という漢字が難しくて変換できない)のことは、
南極連絡船の「しらせ」の由来の人ぐらいにしか知らなかったのですが、
この評伝を読んで、自分の尊敬する人物の一人に加えようと思ったほど
心を動かされました。
宮嶋氏が「なぜ教科書に載せない」と憤慨する理由がよく分かります。
極地探検というと、小学生の時に有名なアムンゼン、スコットの伝記を読んで
いたく感動したのを憶えています。極点一番乗りを果たしたアムンゼン、
ひと月後にスコットが極点に到達したのち、帰途で隊員が一人、また一人と倒れ、
最後に全滅するさまは涙なしでは読めない物語でした。
アムンゼンもその最期は北極探検で遭難した探検家を助けに行き、
自らも還らぬ人となったというのが悲劇的で……。
で、あまり知らなかった白瀬中尉の評伝、筆者は実際に南極に足を運んだことが
あるだけに、その謂は非常に説得力があります
泣かせるのは、恐ろしく貧弱な装備で決死行を挑んだ冒険譚はもちろん、
英雄に対する世間の無理解、当時の時代背景なんかのくだりです。
きっと日本人に受けそうなタイプの英雄なだけに、これからもっと知られるように
なるのではないでしょうか。
ちなみにこちらの本には、これまた尊敬する漂泊の俳人・種田山頭火の評伝も
収められており、これから読もうと思います。