またもや凄いエネルギーの問題作というか、
購ってその日に読了してしまいました。
作家である主人公が、フィクションに疲れて真実のことしか
書かない『真実真正日記』を書き始める……一応こういう設定です
（「一応」、というのは、ラストでそれがひっくり返るから）。
町田康という人は、ほんと人間の観察眼がずば抜けていて、
私たちが日々「なんとなく」感じている生きにくさみたいなものを、
遠慮会釈なく切り取って提出する、そんな技量を持っていると思います。
それは他媒体でも精力的に書かれているエッセイでも
伺い知ることができます。
作品に登場する主人公は、まあパッとしない地味な人間であることが
多いのですが、今回もそれに漏れず、あまり売れなさそうな作家が
細々と暮らす日常生活から出発します。
私はそんなところが共感できるとこなんですが……。
それを取り巻く人間は、一見合理的に行動しているように見えても
実はさまざまな矛盾を孕んでいて、物語の中でそれが明かされていきます。
そして、次第に崩壊に向かうプロット……
今回は、普段の個性的な文体ではなく、独自性を薄めたあっさりとした
文章です。しかし、ところどころに迸る凄まじいエネルギー。
「犬とチャーハンのすきま」（←バンド名）のライブのシーンなど、
パッションをここまで過剰に表現できる作家は恐らく他にありません。
刮目すべき筆力。さらに進化した今作です。
