RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

自力救済(4)

だから言わんこっちゃ無い。

前回「自分以外に誰がハチを撃退するのか」と書いたら

案の定、

「あのう蜂の巣があるんですけど」という申出を頂戴した。

僕がハチ退治をしなければならないのは、

分割しうる機能、

代替できる人格、

つまり信頼できる人間関係を築いて来なかった僕自身の責任だ、

と覚悟は決めたが、それにしても猶予のないことだ。

今回は屋根の庇の下に巣を作っている。

恐らく住人と思われるハチ数匹が周囲を小刻みに旋回、

警戒にあたっている。

前回と違い、今回は3mほどの高さにあることから、

脚立でアタックするのも危険である。

蛍光灯の交換もびくびくするような僕が脚立アタックすれば、

ハチの反撃をもろに喰らうばかりか落下の危険も増幅する。

むしろ、飛び道具を使って間合いをとり、

ハチの迎撃に対し逃げ道を確保することの方が重要だと考えた。

実は前回の木の枝攻防戦の際も、

僕は地上からエアガンで撃ち落すことを考えていたが、

「親切な」「周囲の」人に

「無駄だよ」「かえって危険だよ」と

「アドバイス」を貰い断念したのであった。

そんな折、たまたまつけたテレビで、

中東か北アフリカかどこかでの

民衆のデモの様子が映されていた。

デモ隊に放水する治安維持部隊。

これだと思った。

人間もそうだが、基本、

動物は「水濡れ」に弱い。

気炎を上げる民衆も、びしょ濡れになってしまっては

やる気もなくなる。

ハチも同じに違いない。

僕はホースリールを倉庫から発掘。

蛇口に接続してホースを伸ばし、

カランを思い切り捻ると二、三ホースが震えた後に

勢いよく水が噴出した。

やるぞ。

海行かば水漬く屍。

かけられば水漬く蜂の巣。

恐る恐る蜂の巣の斜め下に侵入、

トリガーを向けた。

じゃあっ。

突然の洪水に慌てふためく警備のハチ、

住人も一斉に飛び出してきた。

ぎゃあ。

僕はすぐに退き、

トリガーを向けたままハチとの距離をとった。

いまの一撃で確実にダメージは与えられた。

続いて二度目の攻撃。

またも水は蜂の巣に命中。

ハチの悲鳴が聞こえる。アウェイする僕。

ハチの混乱に乗じ、

ホースを箒に持ち替えそのままえいっ。

ぽとっ。

渾身の突きは庇と巣を繫ぎとめていた最後の縁(よすが)を

断ち破り、巣は力なく地面に落ちた。

やった。

勝った。

肩で息をしながら、僕はまた一つ孤独になった気がした。