「あ。ケンちゃんやん」
「よおR。まだ生きてたか」
ケンちゃんというのは前の会社の同僚だった人物である。
顔を見るのはかれこれ6年ぶり。
当時
営業をしていた僕と総務課だった彼であるが、
6年経って立場が逆転、
いまは
僕が総務で彼が営業になっている。
僕が会社をクビになり、
ケンちゃんは「オレならトップセールスを叩き出せるよ」と
支店を飛び出して以降消息は途絶えていたが、
奇縁。今年再びまた同じ会社で顔を合わせることになったのである。
かつては一緒で山奥に探検に出かけたりといった
たのしい仲間であったがいまはケンちゃん、
営業成績第一に考えるスレた営業マンに変身。
「やあまた山中、行進したいね」と僕が提案してもそっけなくかわし、
「ところで第二期販売戦略のことについてちょっと聞きたいんだ」
等と真面目な目的で来訪していたのであった。
随分と大人になってしまったケンちゃんであるが、
僕はしかし、目の底に滾る野心を見逃してはいない。
さて、昨日は妻が病院に行った。
実際には週の半分程度だが、
体感としては毎日誰かを病院に連れて行っている気がする。
家族の中で元気なのは僕一人。
残り3人の面倒を見るのはきついが、なんとかやっていくしかない。