RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

公正としての正義

ここにホールの円いケーキがありました。 3人で分けます。 最も公平に分けるには、どうしたらいいでしょう? 政治哲学的に答えると、 「最後に取る人が切り分ける」 になる。 アメリカの政治哲学者ジョン・ロールズという人は 分配の問題を哲学的に研究して、 「無知のヴェール」という社会契約的な概念で 説明した人である。 大著『正義論』は近年、新訳が刊行されたので 僕は欲しくてしょうがないのだが読み返す時間がない。 そんな僕はロールズの末弟子を自認している。 切り分けたケーキを誰が取るかわからない。という 状況は「無知のヴェール」を端的に表したものだが、 要は「自分が何者かわからない」状況では 「何者にも最も公平である分配をする」のが人間、 この分配が公正であるとロールズは説明した。 しかし、実際には自分が何者でどういう立場か 分かりきっているので、自分自身の利害を最大化しようと 汲々としているのが現状。 ケーキの例で言えば、自分が一番目に切り分けたケーキを取ると 分かっている状況で包丁の刃を入れるようなものである。 だから公平な分配など有り得ない。 このように、「無知のヴェール、無理じゃん」と 各方面からはかなり批判され (いま日本で「正義」といえばこの人。になっているサンデルとか)、 ロールズ自身も後年になって修正しているが、 僕は公正の問題を考える際、 いつも師の教えを引くのである。 というのを書いたのは、ここのところずっと 「公正でない」ことを見たり聞いたり直面したりして、 少しく嫌な気分になることがあるからだ。 またこちらも書くと長くなって勉強サボリの原因になるので 書かないが、 僕は公正な分配の結果、不平等が生じても やむを得ないと思っている。 不正に配分して平等を実現するより100倍マシである。 そんなことも考えた。