RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

宿命の鬼

画像

定時で帰宅。

豚児の表情が硬い。

ああそうか。今日は節分だったな。

今年もまた保育園に鬼が出現したに違いない。

「鬼来た?」

「きた」

「泣いた?」

「ないた」

赤と緑の鬼が登場したらしい。

豚児の証言によると、

同じクラスのおともだちは

「みんなないてた」ということだが。

「喰われなくてよかったな」

「でもSAHくんとNEAくんとTORくんがつかまった」

「ええっ。大変じゃないか。しかも男ばっかり」

「でもにげた」

「よかったな。まだそのへんを(鬼が)彷徨いてるかもしれないから

 気をつけろよ」

豚児の表情は硬いままである。

TVでは、大阪市の学校職員の人が

カラ残業で告発されたというニュースが流れていた。

「ほら。ああいうことをしている奴はまた鬼に喰われるよ」

「パパはざんぎょうしないの」

「月100時間残業してたのは昔の話だよ」

「からざんぎょう?」

「違う違う。サービス残業。手当がつかないからな」

「だからびんぼうなの?」

「そうさ。基本給が低い一般職の場合、

 残業手当位しか稼ぐ方法はない。

 でも手当目当てにダラダラ居残るのって、惨めだろ。

 だからパパは一生懸命、時間内で仕事を終えるように

 頑張ってるんだよ」

「でもとんじびんぼうはイヤ」

「貧乏が嫌なら長時間拘束されるキツい労働をするしかないな。

 楽してお金持ちになる方法はないよ。というのは嘘で

 本当はいくつかあるけど、実現性に欠けるね」

「SAHくんのパパはパパとおなじくらいいえにいるけど、

 くるまもおうちもおおきいよ」

「SAHくん家はもともと資産家で、駐車場とか不動産絡みの

 不労所得がたんまりあるからあくせく働かなくてもいいんだよ」

「いいなあ」

「SAHくん家みたいな資本家が頂点となって、

 ウチみたいな最下層までのピラミッドがあるんだよ。

 ウチみたいな、虐げられた人々が「鬼」と呼称されたのが

 そもそもの「鬼」の発端なんだ」

「うちもおになの?」

「そうだとも。貧困の鬼、荒廃の鬼、寂寥の鬼さ。

 鬼である宿命を受け入れてなお逞しく生きるよ。

 ちょっとニーチェ的だね」

「パパかっこいい」

ニュースでは、告発した人が

怒りに震えながらインタヴュウに答えていた。

彼もまた、鬼であった。