一昨日から豚二のハナミズが滝のように、
そして豚児のハナミズも次第にだらだら。
なので夕刻、二人を耳鼻科に連行することにした。
混み合っている。
僕の予約番号は74,75番だったが、
クリニック到着時点ではまだ50番代の診察が行われていた。
豚二を小脇に挟みながら待合で腰掛けていると
受付のおねえさんが声を掛けた。
「あのう大野さん、ちょっとよろしいですか」
しまった。保険証を出し忘れていたか。慌てて母子手帳ケースを取り出すと、
「申し訳ないんですが、もしできましたら豚二くんのオムツを
一枚お借りできないでしょうか」
「え」
「他の患者様で、オムツをお持ちでなかった方がおられまして」
「あ。なあんだ。そんなことですか。二枚でも三枚でも持ってってくださいよ。
メリーズでよければ」
「一枚で結構です。すみません。どうもありがとうございます」
おねえさんに渡したオムツは、無事お困りのママンに届けられたのであった。
よいことをした。僕と豚二は満足だった。
ママンからは丁重に礼を述べられ、豚児に。とラムネまで頂いて恐縮した。
その後、いつも通りぎゃんぎゃん泣いて迷惑をかけながら
ドクターに診察して貰った。
「先程はすみませんでした。当院でも、今後、このような事態に対応できるよう
きちんと準備して参ります。あこれ。これは心ばかりのお礼です」
と、わざわざドクターからもお礼およびお礼の品まで頂き
こちらでも恐縮しきりだった。
紙袋のなかにはお礼状まで添えられていた。
僕ごときの、親切というほどでもない些細な提供に
こうまで返礼をいただいてはこちらもきづつのうございますが
(滋賀の湖北地方の方言で「恐縮である」「気遣いいただいて申し訳ない」の意)
日頃あまり人の役に立っていない自分が
珍しく人の役に立った実感から昨晩はよく眠れた。
そして寝過ごした。