RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

人間の屑

よく、

どぶさらえとか人の嫌がる仕事を自ら進んで引き受けてくれる

素敵な人がいる。

また、

どぶさらえとか人の嫌がる仕事は他人に押し付けて

自分は恬然としている。みたいな

屑みたいな人もいる。

僕は当然、前者でありたいと日夜努力して、

いなかった。

会社の門前に動物の轢死体が転がっていて、

出勤してくる社員は口々に

「アレ見た?エグいよねえ」

「朝から仰天だぜ」

・・・みたいに感想を交わし眉を潜めている。

「誰かあの死骸を片付けてくれないか」

と課長、

フロアを見回したらいつの間にか僕一人が残っていた。

震えながらスコップを手に門前へ。

通行人が顔を曇らせて

3mほど迂回して通り過ぎる中、

僕は

「しゃあ」と気合いを入れたり

「ぅしゃあ」と再度気合いを入れたり

ぺちぺち頬を叩いて気合いを入れたりしたが、

直視できない。

今まで大概の仕事をしてきたつもりだが、

今回については手が足が前に出ない。

呆然と立ち尽くしていると、

「おはようございまあす」と新入社員の椿原さんが現れた。

「片付けしてもらってるんですか」

「いやあちょっとこの死骸を。はは。すぐにやるよ」

「大変ですね」

「マジ、すぐにやるし。オレ忙しいからね」

「私やりましょうか」

「いやあそれは出来ないな。一応、オレ男だし」

「でもなんか顔色」

「いっやあ暑いからかなあ。あはは」

「手袋貸して貰ったらやりますよ」

「・・・頼める?」

言ってしまった。依頼してしまった。

最低である。

おっさんが若い女性に自分の嫌な仕事をさせる。

これを屑と言ったら屑に失礼なくらい

屑な行為である。

果たして椿原さんは僕の代わりに死骸を片付けてくれ、

僕は深く反省、神の前に懺悔することとなった。

人生の最後で神の審判を受けるとき、

これは大きなマイナス材料としてねちねちやられるに違いない。