RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

OCHOKURU

子供の頃はよくやったりやられたりしていたし、

いまでも時々やっているけど

やられることはここのところなかったので、

油断していた。

おちょくられた。

「おちょくる」という言葉は主に関西で使われるが、

標準語でいう「からかう」に近い。

だが厳密な意味としては、「からかう」よりも

人を馬鹿にしたり虚仮にしたりする濃度が高い。

監査を控えてメチャクチャ忙しい僕(事実である)を

掴まえて営業の人。

「あのさー。プレゼン中なんだけど『販売太郎』動かねえんだよ。

ちょっと来て直してくれよ」

「ちょっとの間も手が離せないんです。すみませんが他をあたってください」

「何言ってんだよ。クライアントが待ってんだよ」

「そんな重要なプレゼンならどうして事前に動作を確認してなかったんですか」

「そんなヒマなかったんだよ。お前らパン職とは違うんだ」

「確かに僕よりも12まんえん多くの給料、もらってますもんね」

「だろ。だから早く行って直せよ」

しかたなく仕事を放棄して現場に向かった僕。

「販売太郎」というのはプレゼン用のパソコンソフトである。

「あれ。販売太郎、普通に動作するじゃないですか」

「じゃねえよ。販売太郎のアニメーション機能が動かねえんだよ」

「え。販売太郎にそんな機能ありましたか」

「『ありましたか』じゃねえよ。このソフト発注したのオマエらだろ」

「僕は発注はしましたが選定したのは営業の人たちで、

 保守管理は技術部の担当です。

 それに、僕は皆さん以上にたくさんこのソフトに触れていますが、

 そんな僕でもアニメーション機能の存在は全くもって知りません」

「じゃあどうすればいいんだよ」

「アニメーションをどうしても。というのならパワーポイントとかの

 ソフトを使うか、あるいはアニメーション単体で再生するか、

 いずれにせよ今すぐは無理ですね」

「なんなんだよ、口ほどにもねえ奴。あ。

 お客さんすみませんすみませんウチの使えない奴がご迷惑を…」

プレゼンはその後どうなったのか知らないが、

僕はそこそこ使えていたつもりの「販売太郎」に

全く知らない機能があったことを知って、少しく動揺していた。

マニュアルを引っ張り出してみたが、

ない。

インターネットで検索したが、

ない。

焦る僕を物陰から嘲笑う視線に気づくのに、

そう時間はかからなかった。

おちょくられたのである。

ハナっからアニメーション機能もないのは承知の上で、

それを動かせ。なんて無理難題を言って陥れる、

いわゆる僕を「おちょくった」

のである。

まさか身内にやられるとは思っていなかっただけに

ダメージも大きい。

ひさしぶりの感覚であった。