RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

命名考(5)

毎年この時期になると、

入社が内定した来年度の新入社員の

名簿作りをする。

「最近の若い人は凝った名前をつけるねえ」と

聞き慣れたグチを言うのではない。

凝った名前が多いのは昨日今日に始まった話ではないからだ。

本ブログでも考察しているとおり、

命名というのはプロ野球チームを優勝させたり、

アニメの主要キャラクターになれたりと、

その人の人格、運命までを規定する

極めて重要な作業である。

昔のような安直な命名が減り、世間のパパママが

思考を集中させて凝った命名をするようになったのは

称揚すべきことであり、また当然のことだろう。

しかしながら、凝った命名といっても

「覇亜斗」といった安直な当て字を

先日指弾したばかりだが、

「美海」 「和重」はどうだろう。

「美しく広がる海原」立派な名前である。

「幾重にも重なる平和」これもいい名前だろう。

現代日本人の教養はやはり高水準である。

そう安心しながらエクセルに入力していった。

後日。

新人研修の連絡をするために電話をすることがあった。

「もしもし、鼻山支店の大野と申しますが。

 みうみさんいらっしゃいますか」

「は?」

「あ、いや、びかいさん、と仰るのでしょうか、失礼しました」

「あのう、ウチの娘は『はるみ』ですが」

僕は痛切に反省した。人の名前を呼び間違えるなんて。

ビジネスではあってはならないことだ。

しばらく項垂れていたが、仕事なので気を取り直して

次のお宅をコールした。ぷるるるる。

「もしもし。鼻山支店の大野と申します。あのう、

 かずしげさんに研修のご案内を致したく」

「ええっと、トモカズのことですか」

「いや、かずしげさんの方です」

「あの、それはトモカズのことだと思います」

「あいや、あの、へいわの『わ』という字と、

 かさなるっていう字の、かずしげさんのことです」

「それは、トモカズのことです」

僕は訳が分からなかった。

いまこうしてキーボードを叩いている間も、

「かずしげ」と入力して変換したら真っ先に

「和重」が候補に挙がるのである。

「失礼ですが、どうして『わ』が『とも』で

『かさなる』が『かず』なんですか」

「出し抜けに何を聞くんですか」

「だっておかしいじゃないですか。僕は謝ってばかりだから

 ちょっと反論させて貰いますけれども、「とも」も「かず」も

 日本語では有り得ない読みですよ。ええ、確かに命名には

 『名乗り』というルールがあって、例えば「剛」を

 つよしとかたけしとか読ませることがOKになっています。

 しかしこの場合は、本来の字の意味と読みを鑑みたうえで

 まあ許容範囲だということなのであって、全く無関係な

 音を充てているのではありません。さっきの美海さんだって、

 例えば「東」を「はる」と読ませるのは字の成り立ちから言って

 可能な訳ですが、「美」を「はる」と読ませる由来はありません。

 僕の言っていることがヘンだと思うなら、漢和辞典を繙いてください。」

「ヒトの家に電話を掛けてきて一体何ですか」

「でも、過ちに気づいたなら今からでも遅くはありません。

 日本の戸籍は漢字でしか登録されず、読みは記載されないので

 読み方を変えることは割と簡単にできます。

 勇気をもって、『かずしげ』に改名してくださガチャ 

受話器を持ちながら僕は息を喘鳴のごとく喘がせていた。

モカズさんはもうウチの社には来ないだろう。

残念なことだ。


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