RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

倫理と刑罰

妻は今日も寝ている。

仕事と家庭の両立。というテーマは

文字通り所帯染みていて口にするのもこっ恥ずかしいけれども、

実際シビアな目標というのが最近よく分かる。

さて、テレビに子守をさせてはいけないというが

それでも手のかかる豚児。

夕方6時からBSで「アンパンマン」を放映しているのだが

これを好んでよく観ている。

そのため僕も一緒に観る機会が増えたのだが、

それで一つ分かったことは、

バイキンマンはやっぱり悪い

ということである。

正直なところ、世の中の酸いも甘いも味わった大人になると

こうもストレートな勧善懲悪の物語に

つい懐疑的になってしまうきらいがあり、

アンパンマンは偽善的である、とか

バイキンマンの方が素直で正直だ。みたいな見解を

臆面もなく述べていたのだけれども

間違いだった。

よくよくアニメを観ていると、バイキンマン

暴行、略奪、詐欺、不法侵入、侮辱、器物破損、営業妨害…

などといった、

まるで歩く刑事訴訟法のような所業を犯している。

生育歴は不明だが、

情状にも酌量の余地がないものばかりで、

確かにこれは堂々たる一級の犯罪者、

全く同情の一欠片も見出せないだろう。

翻って世界の警察たるアンパンマンは、というと

こちらは全き品行方正、

代名詞でもあるパンの施し

(聖体拝領をモチーフにしているのだろうか)

に代表されるように、

カトリック的な倫理を体現した

エスキリストに比肩する聖人であった。

そんな当たり前のことに30歳を過ぎて漸く気づいた。

そうなると、バイキンの所業が一層憎らしく感じられるのであるが、

いかにもアンパンの処罰は生ぬるい。

せいぜいパンチで画面の外に吹き飛ばすくらいで、

完膚無きまでに叩きのめす。みたいなシーンは観たことがない。

しかし、ここで倫理と刑罰の問題になるのだけれども、

罪を裁く近代国家というのは基本的に

犯罪者よりも上位の倫理観を持っているべき

なのであり、

いくら正義の名の下にアンパンがバイキンを彼同様に

暴行、侮辱せしめることは

バイキンと同レベルの倫理観に拠っていることになるのであり

処罰する側としては許されないのであった。

僕はアンパンマンを観てその倫理に深く納得したと同時に、

彼のようなモラルの境地に達すべく努力しようと思った。