秘策(2)
「CMのあとは○○氏が語るオランダ戦の秘策!」
……みたいな前フリがテレビだったり
新聞だったり雑誌なんかでもよく見られるんだけれども、
実際CMのあとも引き続いて観たら
○○氏は確かに専門家らしく相手の短所なんかをずばりと指摘して
この通りやったら日本も勝てる。みたいな未来図を示してくれ、
僕なんかも「すげえ。これなら勝てるじゃん」と希望を持つのだけれども、
ダメじゃん公器であるテレビで言っちゃったら。
きっと対戦国の人も同じ電波を傍受したり
アマゾンで雑誌を取り寄せたりして
「日本人はこんな策を弄してるのかケッケッケッ」みたいな感じで
作戦変更、
いざ試合が始まって○○氏の秘策の通りやってみてもなんかうまくいかない、
のは相手がこっちの秘策をお見通しだからで、
結局一敗地に塗れる運命なのだった。
つまりこの教訓から得られることは、
「秘策は誰かに喋ってしまった時点で秘策でなくなる」という
真理であり、秘策レヴェルのナイス策謀は
無闇に人にバラすものではないということなのである。
無論、「秘策」レヴェルに達しない策を耳目を集めたいが為に
「秘策」などと喧伝するのはもってのほかであるし、
事実そういう低レヴェルな「秘策」も散見されるが、
「秘策」を冠するからには守秘を貫かなければならないのである。
我々日本人は言葉の扱いに対してもっと慎重であらねばなるまい。
まとめると、
1.「秘策」は公表された時点で「秘策」でなくなり、普通の策になる。
2.「秘策」と冠して喧伝されている策は1.の通り普通の策に成り下がった策か、
あるいは元々守秘する程のこともないようなありきたりの策である。
……ということになり、結局、世間で流通している「秘策」は
普通の策かあるいはそれ以下の策でしかないのである。
やや陰謀論的に言えば、
「本当の『秘策』は秘されたまま」なのであり、
限られた本当に頭のいい人しかこれを獲得できないのであって
例えば
「必ずお金持ちになれる『秘策』」を持ってて実際お金持ちになった人は
きっとまだその秘策を誰にも喋っていないだろうし
(みんながマネをしたら自分だけがお金持ちでなくなる)
僕みたいな凡夫が秘策の境地に達することは一生無いだろう。
だから僕はこの限られた、本当に頭のいい人が隠し持っているはずの「秘策」を
うっかりだだ漏れさせないようにして
次のデンマーク戦本番に臨んでほしいと切に願うのである。