悲劇は繰り返す。
純粋な善意から、給湯室のやかんやらポットやらを洗っていて、
突然、
凄まじい轟音が轟いたのは僕の仕業。
ドカーンとかズゴーンとかいう安直なオノマトペは好きではないのですが、
思わず「ばごーん」と書きたくなるくらいの爆発音でした。
不注意で、逆さにした魔法瓶を床に落としてしまったのです。
その轟音たるや凄まじく(リフレイン)、
一瞬にしてオフィス中が凍りつきました。
その数秒が僕には永遠のようにも感じられたのですが、
「なんやこの爆音!?」
↓
「誰の仕業!?」
↓
「どういう顛末!?」
……ていうふうに、みんなの思考が凝縮して一瞬にして連鎖するさまが
ありありと眼前に繰り広げられました。
注視する目、目、目、眼差し。
僕はそれらの要求にどう切り返そうかと考える余裕もなく
ただただ動揺し、この場を収束させるかの一点にのみ思考を集中させたのですが、
そういう非常時の行動は何をやっても空回りというか、
思惑だけが先行して相手の承認を得られないというか、
つまり僕はこれだけの騒擾を起こしたことについての説明責任を負っていたのですが
それに応えることもなく。
幸いだったのは僕のすぐ隣や背後に人がいなかったことで、
熱いお湯の飛散や魔法瓶の欠片で傷つけることがなかったのはラッキーでした。
粉々に粉砕された魔法瓶は即日僕の手で荼毘に付されました。
しかし、気圧の力というのは想像以上で、真空状態に空気が入り込むと
あれほどの衝撃を与えるものとは。
悲嘆に暮れた帰り道、僕が営業マン時代に
部下30人あまりの牛乳瓶を誤ってカゴごと落として破砕してしまったことを
思い出していました。
牛乳のぬらっとした艶とガラスの破片が床にきらきら輝いていました。
あれもいまではいい思い出……なわけがなく、
今回の魔法瓶爆破とともに自分の間抜けさを証明する材料の一つにしかなりません。
とりあえず、家にある電動ポットを代わりに持って行くしかない。