RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

轟音ファクトリー「デスメタリック白昼夢」を聴く

かねてから注目しているインディーズバンド、

「轟音ファクトリー」のアルバムが発売されました。

タイトルは、「デスメタリック白昼夢」

2007.12.30 DSRS-0006 ¥300

自主流通なので、いまのところ入手経路としてはライブ会場か

オンライン販売かに限られるようですが、運良く手に入れることができました。

アルバムの帯には、

「疾走する哀愁のメロディーと間隙を突く重低音。

日常の苦痛と嘆きをテーマに構成された4曲+1のコンセプトミニアルバム。

轟音ファクトリーが提唱する「DEATH POP」ワールドがここに!」

と謳われています。

デビュー以来、彼らの音楽に一貫するテーマ

「哀愁のメロディ」「重低音」がどのように進化し、展開されるのか。

聴いてみたいと思います。

【収録曲】

1.後ろ向き三重奏

2.孤独エナジー

3.シャボン玉、割れた

4.心ぶん殴る

5.BONUS TRACK

このアルバムの中にはオリジナル曲はもとより、

童謡・唱歌のカヴァー曲が数曲、収録されています。

このテのバンド(デスメタルなどを標榜する人たち)には相当意外といっていい

取り合わせかもしれませんが、聴けば納得。

彼ららしい味付けのアレンジが施された、デスメタルな一品に仕上がっています。

童謡、特にわらべうた―「かごめかごめ」や、「とおりゃんせ」―などは、

子どもの遊びという脳天気なイメージとは裏腹に、

歌詞を解釈するとなんとも恐ろしい歌であることが分かります。

日本的な怨念、呪い、……昔、『本当は怖いグリム童話』という本が流行りましたが、

日本の昔話も原作を作り替えたものなんかは珍しくありません。

子ども向けに、バッドエンドをハッピーエンドに置き換えてみたり…

ここで、轟音ファクトリーを理解するキーワード「DEATH POP」に

ついて触れてみたいのですが……

もうお分かりの通り、「DEATHなのにPOP」と解釈するのではなく、

「POPなのにDEATH」と読む方が正しいのです。

彼らは、一見「仲良し」「牧歌的」「平和」…という童謡の表層的イメージを掘り返し、

その裏に潜んでいるどす黒いルサンチマンの塊を転がしてみせています。

サウンドの核である、重低音はその怨念的世界のメタファと言えるでしょう。

「シャボン玉、割れた」はあの有名な童謡のカヴァーですが、

この歌も、悲しい隠喩が込められていることは有名です。

轟音は、「しゃぼん玉」の旋律をマイナースケールで書き直し、

作者の悲痛な叫びとして再構成しています。

このアルバムにも一貫している、厭世主義、シニシズム無神論……

こうした主張のアイロニカルな肯定として、童謡のカヴァーが

一つのツールとして用いられています。

果たしてその試みはまだ発展途上でありつつも、次作への期待も

十分に持ちうる作品になったと思います。