○現実の奈落というのが実はそこかしこに
口を開けていて、我々を待ち受けているということ。
○だが、そこに嵌るかどうかは、運不運では片付けられない
ある種の必然性が宿るということ。
○虚無の深まりの果ての別世界、という甘美な夢想。
読み了えて考えてみる。この物語が果たして松子の
「居場所探し」のロード・ムービーだったとしたら、
我々はどんな解答を松子に与え得るのかと。
荒川のアパートでは当然無ければ、北海道、
あるいは南新地、それとも大野島……か。
松子の一人称の語りに、つい同じ景色を重ね合わせたくなる作品。