RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

おひとりさまの愉しみ

社内報のコラムに興味深いテーマが取り上げられていて、

それは

「おひとりさま」ブームについてであった。

はっはーん。おひとりさまといえば

友達のいない僕の得意分野、やっと時代が追いついてきたか。と

余裕をこいて読んでいたら

内容は予想を遙かに超えるラディカルなものだった。

コラムの筆者は、

自分も「おひとりさま」に挑戦しているが

なかなかできないものもある。と述べ、

例として以下の10項目を挙げていた。

1.一人カラオケ

2.一人焼肉

3.一人海外旅行

4.一人登山

5.一人ボーリング

6.一人ケーキバイキング

7.一人海水浴

8.一人ディナーショー

9.一人キャンプ

10.一人ディズニーランド

・・・無理だろう?

反射的にそう思ってしまった自分が情けないが、

日常的にありふれた行為でも単独行動を求められた途端、

急に実行不能な難題に変わってしまう。

僕は1.の一人カラオケだけは可能だし実際によく行っているが、

それ以外は命令されてもイヤだ。

あらためて、おひとりさまを気取っていた自分が

いかに精神的に幼く、いかに普段、誰かにくっついて行動しているかが

よく分かった。

と同時に、

社会には「お誘い合わせの上」という暗黙のルール

厳然として存在するのであり、暗に「一人で来るな」と

おひとりさまの参入を阻んでいるのであることに気づいた。

僕だって一人で焼肉に来ている人がいたら

違和感を感じてしまう。

コラムの筆者は、

「(10のうち)

私は6つまでできましたがあと4つはどうしてもできません」と

この中から一体どれを実行したんだろう?という驚きの告白をし、

「みなさんもおひとりさまに挑戦してみませんか」と

挑発的な文句で締め括っていた。

かなり衝撃的な文章であったが、

しかし、よく考えてみると

文明が進化するほど、

文化が成熟するほど、

人間はよりおひとりさまを志向するようになるのである。

これは文化人類学でも証明されている。

江戸時代の庶民の住居に家族の個室は恐らく無かったが、

今は当たり前である。

例えば児童が手を繋いで遠足に行く光景は普通だが、

OLが手を繋いでお昼休みにごはんを食べに行くことは

あまりない。

そんなんないだろう。と思う方もいるかもしれないが、

昭和初期の写真とかを見ると

普通に女工さんたちが手を繋いで歩いていたりする。

僕の田舎にあった電線ケーブルの工場には

アジアから女の子たちが出稼ぎに来ていたが、

5~6人が手を繋いで駅まで歩いているのをよく見かけた。

おひとりさまとお誘い合わせのどちらが善し悪しというものではないが、

時代の流れとしては必然的におひとりさまに向かうのである。

だから、一過性のブームでなくこれから到来するであろう

真のおひとりさま時代に向けて、僕も準備しておかなければならない。

まずは慣れ親しんだ一人カラオケから始めよう、と

クーポンを整理した。