RoseEnNoir午前零時

ギタリストRose En Noirの日常身辺雑記

丑の刻参り

「五寸釘って、どっかにないですか」

「わわ。丑の刻参り?物騒だねえ」

「は?」

「え。ほら、藁人形」

「何ですかそれ」

まだ若い鷺州さんはどうやら丑の刻参りという習わしを

知らなかったようで、僕が服装とか一連のルールを説明した。

「京都の貴船神社に行くとまだやってる人がいるらしいよ」

「そうじゃなくて、通風口を塞ぐのに要るんです」

「あそうだったんだ。いやあ日常的に五寸釘。なんてあんま耳にしないから。

 勘違いしちゃったなアハハ。ビルメンの人に聞いてきたるよ」

果たしてビルメンの人は鈍く光る五寸釘を貸してくれた。

「参るの?」

「参る。括弧笑。」

まあ、五寸釘と聞いて反射的に丑の刻参りを想定する僕や

ビルメンの人はよっぽどオカルト好きなのかもしれないけれども、

釘なんて今では日常生活においてほとんど使用しないので

久しぶりに五寸釘を手にしたその重みはちょっと新鮮だった。

15cm。無駄に長い。そして思いの外重い。

これで射貫かれたらさぞ効くだろう。

鷺州さんに教えたことが間違っていないか確認するために

ウィキペディアを繙いたら、

ここにも詳しい情報が載っていて勉強になった。

興味深かったのが、呪術に対する刑法上の取り扱いで、

まあ当たり前といえばそうなんだけど、

これ自体は不能犯と言って

犯罪が成立せず、刑罰の対象にならない行為なんだという。

先日の法律研修でも、「因果関係」というのを口酸っぱく言われたけれども、

当たり前であるが現代において呪術の因果関係を証明するのは困難だろう。

無論、

「お前を呪ってやるからな」とか脅したりする行為はまた別の問題である。

まあ、僕は処罰されないからといって丑の刻参りを推奨する意図は全くなく、

実際白装束や蝋燭を用意したり準備が大変だし、夜中にぶらぶら出歩いて

職務質問に遭ったりすることも考えられるのでやめた方がいいと思う。

それより、鷺州さんは

「通風口を塞ぐため」とかよく分からないことを言っていたが、

実際のところ五寸釘は建築現場でもまず使われないし、

一体どういう用途のためにいまも製造されているのか調べても判明しなかった。