有名人から、あまり名の知られていない人まで、著者との対談をマンガにしたものですが、
そのセレクトが、タイトルにあるとおり「絶望に効く」ことをテーマにしたもの。
時折見かける「自殺者が一日100人のこの国で……」 というフレーズに
現れているとおり、著者も、「生きにくさ」を感じている一人のようです。
(大雑把な言い方をすれば)エコロジーや反戦思想、といった著者の問題意識には
共感するしないに関わらず、純粋に自己啓発の本として読むこともできます。
ここに登場するメッセージは、どれもなかなかに穿った言葉の数々。
目から鱗というのは陳腐な褒め言葉ですが、一読して、心を動かされずにはいられない
おすすめのマンガです。
最新刊の第8巻には、著者による「中間報告」と題して、
これまでの連載について考察と反省が試みられています。
自作を評して「その場しのぎの癒し」……と厳しい言葉を投げかけていますが、
読者であるわたし自身にもドキリとさせられる部分でもありました。
「癒し」という言葉が市民権を得て相当に経ちますが、それを標榜する行為のなかで
果たしてどれほどが我々のなかで習慣化され、生活のなかに違和感なく融け込む
ようになったのかというと……「岩盤浴」も、「デトックス」も、未だイヴェントの一つの
域を出ない気がします。「その場しのぎ」という言葉の通り、私たちはまだ「癒し」行為を
つまみ食いしながらその場をやり過ごしているのかもしれません。
脳科学者、茂木健一郎氏が「『癒し』とは、脳の全体性の回復」…というようなことを
読売ウィークリーで述べられていました。私たちは日々、脳のなかでも偏った領域ばかりを
使用しているため、そうでない部分も活性化させることで、全体性が復活する……と
いうのが私の理解した「癒し」定義です。
その点で、私にとって『絶望に効くクスリ』は、正直あまり関心のなかったジャンルからの
メッセージも多数込められています。斯様な内容の豊かさというのは、十分に
「全体性」の回復に資するものではないかと思っています。